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Coffee

マキネッタ、なぜ複数のモデルを買うべきなのか — 「カップ」の落とし穴と定量抽出の秘密

Benjamin J 2026年6月13日 5分で読めます

マキネッタを初めて買う人は、たいていこう尋ねる。「で、何人用を買えばいいんですか?」ところがイタリアの家庭の台所をのぞいてみると、答えが少し奇妙だ。そこにはたいてい、マキネッタが1つではなく2つ3つ、サイズ別に並べて置かれている。そこまでコーヒーが好きだからではない。マキネッタという器具の構造上、それが最も合理的な選択だからだ。

この記事の結論を先に言うとこうだ。マキネッタは「1台であらゆる状況をカバーする」器具ではない。人数や状況に応じてサイズを取り替える器具に近い。なぜそうなのか、そして韓国でどう買えば後悔しないのかを整理してみる。

「何カップ」という落とし穴 — イタリアのカップと韓国のカップは違う

ビアレッティのモカ エキスプレスを買いに行くと、1・2・3・4・6・9・12・18カップまでサイズが分かれている。ここで最初の誤解が始まる。私たちは「カップ」という言葉を聞いた瞬間、頭の中に200〜350mlのマグカップを思い浮かべる。「6カップなら6杯だから、たっぷりだな」と。

ところがマキネッタでいうカップは、イタリア語でtazza(タッツァ)、つまりエスプレッソを飲む手のひらほどのデミタスカップを指す。1杯の容量はおよそ30〜50ml。私たちの知るマグではなく、濃いエスプレッソひと口分だ。イタリア人が「カフェ(caffè)」と言うとき思い浮かべるのは、まさにこの小さなカップだ。

イタリア・ヴェンティミリアのエスプレッソ1杯(タッツァ)
イタリアで「コーヒー1杯」の基準は、この小さなタッツァ(tazza)だ。マキネッタの「カップ」もマグではなく、まさにこのカップを意味する。 · 写真 Lemone, Wikimedia Commons (CC BY-SA 4.0)

そこで「ml」に換算すると、認識のギャップがひと目で見えてくる。1カップを約50mlとして、サイズ別の総抽出量を整理するとこうなる。

表記総抽出量(約)韓国式マグ基準
1カップ50mlエスプレッソ1杯
3カップ150ml濃いマグ1杯 / 小さいカップ2〜3個
6カップ300mlマグ2杯ほど / 小さいカップ6個
9カップ450mlマグ3杯ほど
12カップ600mlマグ4〜5杯
18カップ900ml数人で分けて飲む量

つまり「6カップ」はマグ6杯ではなく、濃いコーヒー約300mlだ。牛乳や水で割って増やせば、マグ2杯ほどになる量だと思えばいい。この単位の違いを知らずに「たっぷり6カップ」と選んでしまい、一人で飲むには多すぎて困る、というケースはよくある。

🇮🇹 イタリアの認識

1カップ ≈ 50mlデミタス(タッツァ)1杯。濃くひと口、立って飲んで終わり。

🇰🇷 韓国の感覚

1カップ ≈ 250ml机に置いてゆっくり飲むマグ1杯。

6人用を買ったからといって2人分だけ淹れることはできない

ここで2つ目の核心が出てくる。「じゃあ6カップを買っておいて、一人で飲むときは半分だけ入れればいいじゃない?」 — 残念ながらそれはできない。マキネッタは「定量抽出」の器具だからだ。

構造を見れば理由は明らかだ。マキネッタは下のボイラー(水)・真ん中のバスケット(挽いたコーヒー)・上の上部の3つの部分に分かれるが、この3つの部分の容量は互いに1セットとして精密に合わせられている。水を沸かして作った蒸気圧が、バスケットのコーヒーを正確に押し上げるよう設計されているのだ。

マキネッタの分解構造 — ボイラー、フィルターバスケット、上部
下のボイラー・真ん中のバスケット・上の上部。この3つの容量は1セットとして合わせられているため、片方だけ少なく入れるとバランスが崩れる。 · 図 Shisma, Wikimedia Commons (CC BY-SA 4.0)

だから6カップに水とコーヒーを半分だけ入れると、2つが同時に台無しになる。

① 水が少ないと蒸気圧が足りない。ボイラーに水を少なく入れると、抽出に必要な圧力がきちんと溜まらず、抽出が中途半端になる。さらに、空のボイラーの壁が過熱して雑味が付きやすくなる。

② バスケットが空だとコーヒーがチャネリングする。バスケットを半分しか満たさないと、蒸気がコーヒー層を均一に通過できず、空いた空間へ抜けてしまう(チャネリング)。結果として、ある粉は過抽出されて苦く、ある粉はほとんど抽出されず酸っぱい。1杯の中に苦味と酸味が入り混じった濁ったコーヒーができあがる。

マキネッタの黄金律 — 水は安全弁の下まで、バスケットはすり切りで満杯に。少なく入れて少なく作るという選択肢はない。

もちろん一部のモデル用に「容量を半分に減らすディスク」のようなアクセサリーはあるが、標準ではなく入手も難しいうえ、味も落ちる。結論は単純だ。少なく作りたければ、より小さいポットが必要だ。

だからイタリアの家にはポットが複数ある

これで冒頭の風景が理解できる。イタリアの家庭がサイズ別にマキネッタをそろえているのは収集趣味ではなく、きわめて実用的な暮らしだ。マキネッタで「サイズを変える」とは、すなわち「ポットを変える」という意味なのだから。

  • 朝に一人で、濃く一杯 → 1カップまたは3カップの小さいポット
  • 二人で、または大きなマグに牛乳を入れて → 6カップ
  • 週末に家族・客が集まるとき → 9カップ・12カップ
ビアレッティ モカ ミニ エキスプレス 1カップ — 最も小さいマキネッタ
最も小さい1カップ(1 tazza)のマキネッタ。一人で濃く一杯飲む日のためのサイズだ。 · 写真 Coyau, Wikimedia Commons (CC BY-SA 3.0)

一人で飲む平日の朝は小さいポットでちょうど一杯、客が来る週末は大きいポットでたっぷり。1台で中途半端にしのぐ代わりに、状況に合ったポットを取り出して使うのだ。そうしてこそ、毎回「容量を満杯にした」最もおいしい抽出が得られる。

トレイに載った複数のエスプレッソカップ
客が来たら小さいカップ数個に分けて出す。「何杯必要か」がそのまま「どのポットを取り出すか」になる。 · 写真 Jberkel, Wikimedia Commons (CC BY-SA 4.0)

韓国ではどう買えばいいのか

とはいえ、最初から3つすべてを買う必要はない。韓国の飲用習慣(マグでゆっくり、しばしば牛乳や水を混ぜて)を基準に、現実的な購入順を整理するとこうなる。

一人で、濃い一杯中心
3カップを基本に。デミタスなら2〜3杯、マグなら濃く一杯。
一人だがラテ・アメリカーノで長く
3〜4カップ。濃いベースを牛乳・水で増やして大きな一杯。
二人で、または大きなマグが好み
6カップ。最も無難で大衆的な「国民サイズ」。
家族・客がよく集まる
9〜12カップを追加で。小さいポットと一緒に置けば完成。

まとめると、最初のポットは一人で飲む量に合わせて小さく(3カップ前後)始めるほうが後悔が少ない。「たっぷり6カップ」の落とし穴にはまらないこと。そしてコーヒー生活が深まり、客を迎えることが増えたら、そのとき大きいポットをもう1台迎え入れればいい。イタリアの家庭のように小さいポットと大きいポット、2台体制になった瞬間から、マキネッタを本格的に楽しみ始めるのだ。

ガスコンロの上で抽出中のビアレッティのマキネッタ
容量を満杯にして抽出するとき、マキネッタは最もおいしいコーヒーを出す。 · 写真 Berteun Damman, Wikimedia Commons (Public Domain)

一行まとめ — マキネッタの「カップ」はマグではなく50mlのエスプレッソカップで、半分だけ満たして少なく作ることは不可能だ。だから人数や状況が変われば、ポットそのものを変えなければならない。イタリアの家にマキネッタが複数ある理由だ。

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